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〒731-4311 広島県安芸郡坂町北新地2丁目3-10

大腸がんについて

大腸とは

ヒトは食事をするとまず、口から食道に食べ物が送られます。その次に胃に入り消化され十二指腸(約20cm)から小腸(約3m弱)へと送られ消化吸収されます。小腸もその終末部では食べ物はもはや完全に便となっていますがこの段階では便はまだ完全に液体です。その後大腸(約1.5〜2.0m)に入り水分が吸収されS状結腸あたりではいわゆる固形の便の形となります。すなわち大腸は消化吸収された残りの腸内容物をため水分を吸収しながら大便にするところです。また、多種多量の細菌の住みかでもあります。そしてそれらは直腸に一旦蓄えられ、あるときに肛門から排出されるのです(下図)。

大腸がんとは

大腸癌は消化管の中でも最後の部分の消化管におきる癌であり、大腸粘膜のあるところではどこからでも癌ができますが、S状結腸と直腸が大腸癌のできやすい部位です。
大腸癌は、日本人に増加傾向が著しい癌です。年間の罹患数が1990年には6万人、1999年には9万人を超え、2015年ごろには胃癌を抜くとの予測もあります。また、大腸癌による死亡は、男性では肺がん、胃癌に次いで3番目、女性では2007年に1番になっています(下図)。

男性も女性もほぼ同じ頻度で大腸癌にかかります。60歳代がピークで70歳代、50歳代と続きます。欧米と比べ、10歳ほど若い傾向があります。5〜10%の頻度で30歳代、40歳代の若年者に発生し、若年者大腸癌は家族や血縁者の中に多発する傾向が認められることがあります。
大腸癌の発生には、遺伝的因子よりも環境的因子の比重が大きいと考えられています。食生活の急激な欧米化、特に動物性脂肪やタンパク質のとり過ぎが原因ではないかといわれています。しかし、5%前後の大腸癌は遺伝的素因で発症するとされています。
大腸癌にかかりやすい危険因子として、

  1. 大腸ポリープになったことがある。
  2. 血縁者の中に大腸癌にかかった人がいる。
  3. 長い間潰瘍性大腸炎にかかっている。
  4. 治りにくい痔瘻(じろう)
などの因子が指摘されています。

大腸がんの症状

大腸癌の自覚症状は、大腸のどこに、どの程度の癌ができるかによって違います。小腸に近い大腸では便が液体のためなかなか症状は出ません。右下腹部にしこりを触れたり、痛み、または貧血などが多いです。出血はしていてもあきらかな排便時出血としてとらえにくいようです。対照的にS状結腸や直腸では腫瘍(癌)によって腸の中が狭くなり便が細くなったり場合によっては完全に通りが悪くなり腸閉塞となりことがあります。また、下血(排便時出血)が見られることが多いようです。もちろん全く症状を呈さない癌も多く、検診の便潜血陽性で見つかることもあります。

癌に特徴的な症状はなく、良性疾患でも癌と類似した症状がおきます。血便、便が細くなる(便柱細少)、残便感、腹痛、下痢と便秘の繰り返しなど排便に関する症状が多く、これらはS状結腸や直腸に発生した癌におきやすい症状です。中でも血便の頻度が高く、癌の中心が潰瘍となり出血がおきるためです。痔と勘違いして受診が遅れることもありますので注意が必要です。癌による血便では肛門痛がなく、暗赤色の血液が便に混じったり、ときに黒い血塊が出るなどの特徴があります。肛門から離れた盲腸癌や上行結腸癌では血便を自覚することは少なく、貧血症状があらわれてはじめて気がつくこともあります。腸の内腔が狭くなっておこる腹痛や腹鳴、腹部膨満感や痛みを伴うしこりが初発症状のこともあります。

時には、嘔吐などの癌による腸閉塞症状で発見されたり、肺や肝臓の腫瘤(しゅりゅう)として大腸癌の転移が先に発見されることもあります。

大腸がんの検査

検査としては、

  1. 大腸内視鏡(ファイバースコープを肛門より挿入し大腸を肉眼的に観察するもの)
  2. 注腸造影検査(胃のバリウム検査と異なり、バリウムを肛門から注入し大腸のレントゲンをするもの)が中心です。
  3. 腹部全体(転移の有無)を調べるためにCT、超音波検査、MRIなどを必要に応じて検査します。CTは胴体の輪切りのレントゲン写真です(断層撮影)
  4. 肺の転移を調べるためにはレントゲン検査やCTを施行します。
  5. また、血液中に腫瘍の存在を示唆する腫瘍マーカーを採血で調べます。腫瘍マーカーはいろいろな癌でさまざまな種類がありますが、大腸癌ではCEAとCA19-9というマーカーを測定します。腫瘍マーカーは癌患者さんにおいて初回の手術時に高値を示すことは比較的少なく、どちらかというと手術後に経過を見てゆく時に(再発の早期発見)に有用といわれています。
  6. MRIでは当院では拡散強調画像という方法を用いており、単なる断面図だけでなく、その質的な評価(癌や癌の転移であるか否か)も検討しています。

大腸癌は、早期であればほぼ100%近く完治しますが、一般的には自覚症状はありません。したがって、無症状の時期に発見することが重要となります。大腸癌のスクリーニング(検診)の代表的なものは、地域、職域で普及してきた大便の免疫学的潜血反応で、食事制限なく簡単に受けられる検査です。この検査が陽性でも、「大腸癌がある」ということではありませんし、逆に陰性でも「大腸癌はない」ともいえません。健康な集団の中から、大腸癌の精密検査が必要な人を拾いあげる負担の少ない最も有効な検査法です。したがって、40歳を過ぎたらこの検診を受けることをお勧めします。

大腸がんの治療

治療方針は基本的には“大腸癌研究会”が刊行している“大腸癌治療ガイドライン”に沿って行っております。
治療法には 内視鏡的治療、外科療法、放射線療法、化学療法があります。

1)内視鏡的治療(当院では内科医が行なっています)

内視鏡で観察し、ポリープがあれば切除します。茎のあるポリープはスネアと呼ばれる針金を、首の部分に引っかけ電気で焼き切ります。この方法をスネアポリペクトミーと呼びます。無茎性、つまり平坦なポリープの場合は、周辺の粘膜を浮き上がらせて広い範囲の粘膜を焼き切る内視鏡的粘膜切除術(EMR)で摘出します。スネアポリペクトミーでは入院は不要ですが、EMRでは出血や穿孔の可能性もあるため短期間の入院が必要となる場合があります。摘出したポリープの病理学的(顕微鏡)検査が重要です。ポリープ(腺腫)や粘膜内にとどまる早期のがんは、これらの方法で簡単に治療することができますが、病理検査で病変が深くまで(粘膜筋板を越えて)拡がっていれば、リンパ節転移の危険性が10%前後生じるため外科療法が必要となります。

2)外科療法

手術は、(1) 癌を含めある長さ分だけ大腸を切除しその端同士を繋ぐ、(2) その傍らから体の中央に連なるリンパ節をしっかりとる(リンパ節郭清)の両方をもって完結します。腸はホースのような構造ですので切除したらその端同士をつなぐのは理解しやすいと思います。リンパ節郭清はその癌の進み方にあわせて小範囲のリンパ節郭清や広範囲のリンパ節郭清(中央に向かって)など対応が変わってきます。また、直腸では肛門からの距離が短い場合は肛門ごと切除し人工肛門を造設せざるをえないことがあります。

開腹手術と腹腔鏡補助下の手術

手術は、病巣のある大腸を切除し、しっかりしたリンパ節郭清を行うことが基本です。腹腔鏡補助下での手術は、あくまでアプローチ法の違い(従来どおりの開腹か腹腔鏡か)だけで、大腸切除とリンパ節郭清はしっかりされなければなりません。日本では基本的には筋層までと思われる癌で上行結腸、S状結腸に関して適応としております。しかし、当院ではさらに手技の向上を追求しており、stage II, IIIに対しても条件が許せば腹腔鏡補助下で行っております。もちろんこれは患者さんの希望があってのことでもちろん従来の開腹手術でも治療効果になんら問題はありません。

これまでの開腹手術では、術者、助手の手がお腹に入るようにするために、通常約15〜20cmの皮膚切開を行います。しかし腹腔鏡補助下手術では、径が5mmと12mmのトロカー(細い筒のようなもの)を全部で4〜6本腹腔内に挿入して、そこから細長い鉗子とカメラを出し入れして手術を行います。当然切除した大腸を取り出すために、約4〜6cm程度の傷を作らなくてはいけませんが、それは虫垂炎(俗にいうモーチョー)の手術の傷跡程度しか残りません。この小さな傷ですむということは、美容的な長所以外に以下のような大きな長所があります。

1.腹腔鏡補助下手術の長所

(1) 腹壁の機能障害の軽減
(2) 術後疼痛の軽減
(3) 創部からの出血量の軽減
(4) 創部への癒着の軽減
さらに、上記の(1) 腹壁の機能障害の軽減と(2) 術後疼痛の軽減のおかげで、
(5) 術後呼吸機能低下の軽減
という大きな長所に結びついています。呼吸器合併症は重篤化すれば命に関わります。特に高齢者において呼吸器合併症は大きな問題なので、これを軽減できるのは非常に大きな長所になります。さらに、腹腔鏡手術は空気に腸管をさらさないですむことにより、
(6)術後早期の消化官運動の回復
が見込まれています。またカメラを使用して視野を得ているため、近接することにより、
(7)開腹手術よりも拡大した視野で観察
することが可能となっています。

2.腹腔鏡補助下手術の短所

しかし長所ばかりではありません。開腹手術よりも細くて小さな器具を使用し手術をするため、一般的に開腹手術よりも手術時間がかかります。
また腹腔鏡手術では、腹腔内に二酸化炭素を注入して(気腹といいます)、手術をするための空間を作ります。そのため腹腔内圧があがり、循環器系(心臓・血管系)に影響を与えます。一般的に気腹圧は10-12mmHgで手術を行い、14mmHg以下の気腹圧であれば健常者では安全と考えられています。しかし心機能が悪かったり、特に虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)を患った患者さんには腹腔鏡手術を行えないこともあります。手術を受ける患者さんには術前に、病変に対する検査以外に、循環器系および呼吸機能の検査を必ず行い、どのような手術方法が適切かを判断するようにしています。
また、腹腔鏡手術は比較的新しい手術です。悪性腫瘍(癌など)に対して、現在でている手術の治療成績とは開腹手術の成績であり、腹腔鏡手術の悪性腫瘍に対する手術は今までわかっていませんでした。そこで日本を含め欧米を中心に、大腸癌に対して腹腔鏡下大腸切除術と開腹大腸切除術を比較する研究が行われました。欧米でのいくつかの研究は結果が発表され、短期入院成績は腹腔鏡手術が優れており、長期成績では開腹手術と同等であったというものでした。日本での研究はまだ進行中であり、結果が出るにはまだ数年か待たなくてはいけません。
腹腔鏡手術は近年開発された手術手技であり、特殊な技術・トレーニングを必要とし、だれもが安全にできるわけではありません。また施設により腹腔鏡手術の対象としている患者さんが異なるのが現状です。開腹手術と比較した長所、短所の説明を十分に受けて、腹腔鏡手術か開腹手術かを決定して下さい。

直腸癌の手術

直腸は骨盤内の深く狭いところにあり、直腸の周囲には前立腺・膀胱・子宮・卵巣などの泌尿生殖器があります。排便、排尿、性機能など日常生活の上で極めて重要な機能は、骨盤内の自律神経という細い神経繊維によって支配されています。進んでいない直腸癌には、自律神経をすべて完全に温存し、排尿性機能を術前同様に残すことも可能です。しかし、自律神経の近くに進行している直腸癌では、神経を犠牲にした確実な手術も必要となります。直腸癌手術は、進行度に応じたさまざまな手術法があります。代表的な手術である自律神経温存術、肛門括約筋温存術、局所切除、人工肛門について説明します。

1. 自律神経温存術

過去15年間に進歩した手術法です。直腸癌の進行の度合いや、排尿機能と性機能を支配する自律神経繊維を手術中に確認し、必要に応じて選択的に自律神経を温存する手術法です。我が国の大腸外科医が世界に誇れる成果です。癌を徹底的に切除しながら、同時に進行度に応じて神経を残す方法です。全部の神経が残せれば、手術前と同様な機能、つまり男性では射精、勃起機能を完全に温存することができます。やや進んだ癌では、勃起機能のみを残す手術法もあります。

2. 肛門括約筋温存術

以前は直腸癌の多くに人工肛門がつくられていましたが、最近では直腸癌の8割は人工肛門を避ける手術ができるようになりました。自動吻合器という筒状の機械を使って、癌の切除後に短くなった直腸端と結腸の先端を縫合し、本来の肛門からの排便を可能にする手術法で肛門括約筋温存術と呼ばれます。肛門縁から5cm以上、歯状線(肛門と直腸との境界)から2cm以上離れていれば、自然肛門を温存することが可能です。この手術と自律神経温存術を併用すれば、術後の機能障害をかなり軽減することが可能となりました。さらに最近では、歯状線にかかるような、より肛門に近い直腸癌であっても早期癌や一部の進行癌で肛門括約筋を部分的に切除して自然肛門を温存する術式が専門施設で行われるようになってきました。しかし、高齢者の場合、無理に肛門を残すと術後の頻便などのため逆効果になることもあります。したがって、手術法と病期の進行度を正確に説明し、年齢、社会的活動力、本人や家族の希望などを考慮にいれ、総合的に術式を決定することが極めて重要です。

3. 局所切除

早期癌や大きな腺腫に採用される手術法です。開腹手術ではなく、肛門からと仙骨近くの皮膚、直腸を切開し病変に到達する方法です。術後に、放射線療法や化学療法を追加する場合もあります。

4. 人工肛門

肛門に近い直腸癌や肛門にできた癌では、人工肛門を造設する直腸切断術という手術を行わなければなりません。また、高齢者は肛門括約筋の力が低下しており、無理して括約筋温存術を採用すれば術後の排便コントロールが難しい場合もあるので、人工肛門による排便管理を勧めています。ビデオ、患者会(オストメイト)や専門の看護師(当院には専門看護師がいます)を通し、ストーマ教育を充実させ、人工肛門管理の自立とメンタルケアに務めています。

3)放射線療法

放射線療法は直腸癌の原発巣や骨盤内再発の治療、大腸癌の骨転移、脳転移に行われる場合がほとんどです。放射線療法はある程度効果の期待できる治療法ですが、我が国では直腸がんの術前治療としてはそれほど行われていません。放射線を照射すると、癌組織だけでなく周囲の臓器にもダメージを与えるためです。しかし、骨盤内全体を占めるような大きな癌には、手術前に放射線療法を行った後、手術をすることもあります。また、化学療法を併用することもあります。手術後に骨盤内に再発した癌や疼痛には、放射線療法がしばしば行われます。
当院には放射線治療の施設がないため県立広島病院や広島市民病院の放射線科とタイアップして治療を行っております。

4)化学療法

化学療法の治療方針も基本的には“大腸癌研究会”が刊行している“大腸癌治療ガイドライン”に沿って行っております。
進行癌の手術後は再発予防の目的で、抗癌剤による補助化学療法が行われる場合があります。再発予防目的の抗癌剤の効果を確かめる研究が多数行われましたが、十分な効果が確認された研究は我が国ではまだないようです。現在、抗癌剤の有効性を検討する臨床比較試験が行われています。
手術時に肝臓や肺などに転移していて切除できなかった場合や再発が明らかな場合には、予防的な補助療法とは異なり、より多量の複数の抗癌剤による併用療法が行われます。肝臓だけに転移がある場合は、肝動注化学療法と呼ばれる肝動脈から抗癌剤を注入する治療を行う場合もあります。病巣のみに高濃度の抗癌剤を投与する方法です。
現在、進行・再発大腸癌に対してはFOLFOX, FOLFIRIを中心に行ない、最近ではXEROXも行なっております。もちろん分子標的薬であるアバスチンやアービタックスも併用し良好な治療成績を得ております。
抗癌剤治療を受ける場合には、使用薬剤、使用目的、投与方法、予想される副作用、予定使用期間などについて担当医と十分に相談する必要があります。

5)再発・転移大腸癌の治療

もし転移・再発が発見された場合、その部位や転移の個数により治療方法が異なります。大腸癌以外の癌では転移・再発した場合に手術を行うことはまれですが、大腸癌の場合には肝臓や肺、骨盤内に転移・再発し、他の臓器に転移・再発していない場合には手術を行う場合があります。また手術以外にも抗癌剤、放射線治療などが有効な場合もあります。
再発・大腸癌の治療方針は施設により異なります。担当医から十分に説明を受けて、状況によってはセカンドオピニオンを受け患者さん自身が納得した治療を選択して下さい。

6)手術後の管理

大腸癌は手術が治療の中心です。少し進行していても治るチャンスが他の消化器癌に比較して高いわけですが、手術後は再発の早期発見のために定期的な検査を行うことが極めて重要です。大腸癌では肝臓や肺・骨盤内に転移・再発する場合が多いのですが、その場合でも切除可能な場合には早期に転移・再発病変を切除したり、切除不可能な場合にも早期に化学療法や放射線療法を開始することが大切だからです。したがって、手術時の病期により異なりますが、手術後2年間は2〜3ヶ月に一度通院し、3ヶ月毎に胸部腹部のCT、と腫瘍マーカーなどの血液検査を行います。術後2年以降は6ヶ月毎に胸部腹部のCT、と腫瘍マーカーなどの血液検査を行っています。5年間の追跡が必要です。

当課の成績

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